循環器疾患(CVD)、すなわち心臓血管障害は、毎年世界的に主要な死因となっている。これは個人、家計、財政にとって多大な金銭的負担となる。入院治療、長期疾患管理、心臓発作や脳卒中の再発による費用を含む。また、一家の稼ぎ手を失うか、循環器疾患患者の介護のために他の家族構成員が仕事を辞めざるを得ない場合があるため、機能障害のコストおよび連鎖的なコストも含む。政府もまた、早期退職と死亡により税収を失う。コスト増加に直面しても、人々が利用しやすい医療制度を維持するために、財政を他の予算から再配分することを余儀なくされる。
中国、オーストラリア、香港、日本、シンガポール、韓国、台湾、タイの8か国の調査では、虚血性心疾患 (IHD) および脳卒中の直接的・間接的費用のうち、喫煙、高血圧、肥満、高コレステロールの4つの改善可能な危険因子によるものが530億ドルと推定されている。
その悪影響にもかかわらず、これらの危険因子、特に顕著な症状を示さない高血圧と高コレステロールの2つの「沈黙した」目に見えない危険因子は、無視されることがあまりにも多い。心臓発作や脳卒中のような循環器疾患事象を経験している人でも、医師が設定した目標とするライフスタイルと投薬の変更を実践できている男性と女性はおよそ3分の1に過ぎない。それにもかかわらず、これらの患者は、さらなる冠状動脈および大脳事象の発症リスクが最も高いグループに属しており、冠状動脈性心疾患のない患者より死亡率が6倍高いのである。
そのため、循環器疾患のリスクを軽減するために積極的に取り組む意識を高める必要がある。保健機関、政策立案者、およびNGOからの一次予防および二次予防の支援の強化も必要である。
こうした関係機関の決定と戦略を報告するために、ザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(The Economist Intelligence Unit/EIU) とその子会社であるEIU Healthcareは、中国、オーストラリア、香港、日本、シンガポール、韓国、台湾、およびタイのアジア市場において、改善可能な四大循環器疾患危険因子に関する蔓延状況とコストの調査を実施した。